Mr.音楽・アントニオ・カルロス・ジョビンの出す正解

【Mixcloudに"レコード水越によるJobim mixtape"をアップしました】▼

http://www.mixcloud.com/suppamicropamchopp/

アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽だけで編集した組曲風な38分間のミックス。ジョビンって、ボサノバの人でしょ...というくらいの認識の人はきっと驚くのでは。ボサノバやサンバ、ブラジル音楽という枠には収まりようもない、地球人類音楽史の中でもトップクラスに重要な作曲家ジョビンのあまりポピュラーではないかもしれない部分を意識した組曲風な38分。

ウルブ

ウルブ

1番狂ってるアルバム「ウルブ」から1曲も入れなかった・・ のは手元に見つからなかったから。探せば見つかったはずだけど探す時間も惜しんで作った。その代わり同時期のディープな自主制作アルバム「マチッタ・ペレー」からの曲を多く選んでる。
Jobim

Jobim

ぼくにとって世界一好きなピアニストは間違いなくA.C.ジョビン。ジョビンのピアノには最良のジャズなタッチがしっかりとあるが、ジャズピアニストにはどうしてだかジョビンのように無駄の無い演奏ができない。ジョビンのタッチは崇めたいわけではなくとも、実際極めてとってもありがたい。ピアノだけで満たされるのに、アレンジされまくった録音の中に添えられるピアノもまたたまらなくいい。クラウス・オガーマンのオーケストラアレンジもデオダートのアレンジもどちらも好きだ。サウンドが気に入らないアルバムでも、内容に耳を澄ますと、息を飲むかっこよさ。当然ミックス内の鍵盤演奏は全部ジョビン。正解な音しか出せない”あんとにおかるろすじょびん”という名の超越的音楽存在のこのシンプルなピアノを追いかけて真剣に聴いてみてほしい。

ジョビンの音楽に最初に出会ったのは、ジョビンの最後のオリジナルアルバム「アントニオブラジレイロ」が発売された1995年で、新宿のヴァージンメガストアの大袈裟なポップ文(太陽系音楽の最高傑作!とか確かそんなような..)に釣られて試聴して驚いて即買いし、それ以降聴く音楽が変わった。それまではロックミュージックに割とこだわっていたが、そんなこだわりがばかばかしくなっていった大きなきっかけの1枚だった。本当に出会えて良かった。
アントニオ・カルロス・ジョビン―ボサノヴァを創った男

アントニオ・カルロス・ジョビン―ボサノヴァを創った男

ジョビンの妹、エレーナ・ジョビン著「アントニオ・カルロス・ジョビン ボサノヴァを創った男」には、ジョビンが体験した自然との間の超常的現象についても物語のように記されていたりして興味深い。ジョビンにとって音楽は自分の力で作り出すものではなかった。本の中で一番気に入ってるのは、ジョビンが音楽を創ることと向き合う世界のことを「真っ暗闇の立方体」と名付けていたこと。
真っ暗闇の立方体の中から音はやってくる。Mr.音楽トム・ジョビンを媒体にして現れたでっかいソレ達はとても深い響きを持っている。それが少しでも伝わったらいいな。