僕たちみんなデューク・エリントンの作ったレールの上に居ながら

【Mixcloudに"レコード水越によるDUKE ELLINGTON mixtape"をアップしました】▼

http://www.mixcloud.com/suppamicropamchopp/

今回が"レコード水越の、偏見が消える公開mixtapeシリーズ”のひとまずの完結編。
ジャズの神様、というより現在のポピュラーミュージックの基礎を作り上げた偉人デューク・エリントンの音楽を今の(レコ水の)視点から編んだ39分間のミックス。
ロックファンや電子音楽ファンの中にはサン・ラーを大層ありがたがって一目置き、サン・ラーというワードに敏感でいる人が多いように感じている。しかし彼の音楽の良さの基盤にはデューク・エリントンのテイストが大きく浸透している。サン・ラーのアルバムを追いかけはしても、エリントンには延々スルーである人は謎であり且つもったいないことをしてるように思う。個人的には比べるのもエリントンに失礼なくらい格が違うと思っている(イメージのエグさヤバさがロックファンにとってロックかロックじゃないか ということなのかもしれない)。サン・ラーは私も嫌いじゃない。エリントンが好きなんだなあという面が可愛いらしい。ただ、音楽ファンだったら、先にエリントンの音楽がもたらしてきたことをある程度知っておいた方がいいのではないか、と思う。
セロニアス・モンクやアブドゥラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)、ランディ・ウェストン、ローランド・カーク、ミンガスなどもエリントンのテイストを各自の下地に丸見えに敷いて引き継いでいる。モンクとカークは個性が強烈なので人気があって当然だが、デューク・エリントンの音楽をそれなりにコレクションしようと思う層というのはブラスバンドで実際に演奏した人がアンサンブルの凄さを体感した上で学校を卒業してからも趣味でも聴き続けるパターン以外で探すとなると「東京大学アルバート・アイラー」の影響下の人か、渋谷毅さんのエリントン曲の演奏活動から好きになるくらいしかなかなか見当たらない。1930年前後のNYコットンクラブ箱バン時代のビックバンドイメージや大ヒット曲が与える印象は、その後のビーバップ/モダン/モード/クロスオーバー/ニューチャプターが取り上げる系 らの『JAZZ』とはきっぱり断絶があるかのようで、まだまだこれからエリントンが積極的に聴かれる気配は見えない。。、とかなんとか言ってみても私の視野は恐ろしく狭く、今どうなっているか、過去どうだったのか、など、実際のところはほとんど捉えられてはいないも同然なはずだと思っているが、一言で言うなら、ポップミュージックの基本はエリントンなので、もっとみんな知ろうとしようよ!聴こうとしようよ! ってことにつきる。
確実に見過ごされている未だ活用されてない様々な音楽的な種が過去の音源の中に沢山紛れているし、時代によっての大衆の音楽の捉え方の変化も考察した上でエリントンの超音楽性についての真の再評価が改められる必要がある気してならない。

今回は、超有名曲はあえて使わないようにしているが、エリントンの音楽を殆ど知らない人やにわかに興味を持ち始めてる人にとって意外な良さのある隠れた、私好みのテイクを持っている限りのCDから聴き易いかんじで繋げてみてる。ステレオ化時代初期50年代のエリントンの録音はたまたまテクノロジーの進化とマッチングしてド迫力性が快感度マックスなざらついたクリアさでパッケージングされていて、家で手ぬるい環境で聴いてるだけだと様式の古さに自分と無関係な音楽だと思わされがち。でも、私はDJでよく色んな曲をかけてみているが、爆音で鳴らせる環境で聴くと衝撃をうける。サウンドを楽しむならダントツ50年代の音源だが、40年代30年代のエリントンの仕事が実はもっと素晴らしいのだが、録音音像はいたしかたなくもやもやぼやぼやしているのが、これからエリントンを聴こうという人の障害になっている。それら古い音像からリアリティを持って聴取するには想像力が必要だ。今回の私のmixは、ハイファイ期とローファイ期をなるべく交互に交えるように気を配った。そうすることで想像力の手助けができるのではないか、という意図がある。クラブ系リスナーにエリントンの良さを訴求する意図であればもっとクリアな音中心のレアグルーヴよりのmixを作ることも可能だが(ジョビンmixでもエレカシmixでもそのように出来た)、私は「オンガク」存在としてのエリントンを知ってもらうべきだと思うからそうしなかった。エリントンをジャズだと思って聴いてはいけない。いけないということもないが、そう思うから見誤るようなことは多いだろう。エレファントカシマシもロックではなくただの音楽、小沢健二も歌謡曲ではなくただの音楽、ジョビンもボッサではなくただの音楽、みんな同列の美しい「オンガク」という名の素晴らしい音楽なのだ。

聴き終わったらエリントンの世界が少しでも前より身近に感じられたらいいな。
                ^^