カセットの世界

カセットケースからテープを"カチャ"っと取り出して、カセットデッキなりラジカセなりのイジェクトボタンを押し"カパ"っとトレイを開け、”ジョ”っとテープをA面を再生するように方向を気をつけてインサートし、再生ボタンを押して、無音から有音への段階に静かに興奮してるところに1曲目が始まる。これらの前戯。
A面ラスト曲の音が終わってもジャストタイムで終わる作品は少なく、しばらく”スーーー"っというスピーカーの音を聴いて”カタン”っと再生が止まる音を確認して手が空いたらB面にひっくり返し、切り替わった気持ちでA面とは別の世界を楽しむ。。
この一連の儀式を行うことには古風な喜びがある。
一方的なコミュニケーションにも礼儀あってこそ育める関係があり、コミュニケーションの手間を省きすぎた関係はうら寒く、空しく、味気がない。
それらの動作をめんどくさがる気持ちも分かるが、アナログ機器を再び使うようになると、便利さの中で失ってしまってるかもしれない気持ちの余裕まで復活させられる可能性は高い。

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この度、suppa micro pamchopp の新作アルバムがスピードリリースされました。
6月に「わたしはオルガン」がリリースしはじめたばかりですが、今回はレコード水越からではなく、主にカセットを媒体とする大阪の期待の新レーベルbirdFriendからとなります。
birdFriendは海外からも注目されているのでワールドワイドに発信されて、他のラインナップも共鳴できる作品が多い点と、以前からカセット用のアルバムを作ってみたかったということもあって、自主ではない他レーベルからリリースしてもらうことを決めました。

これがデータ用のジャケット。
カセットはカセットでちがうデザインをしていて、共にスッパデザイン。
http://birdfriendtapes.tumblr.com/post/95460281811
A面に8曲、B面に8曲、計16曲収録。そのうち4曲はでたらめなうたもので、それ以外の曲は不良インストテクノトラックとなってます。
「わたしはオルガン」は極力でこぼこした不純物侵入を省いたようなアルバムだったのに対して、「original works」にはでこぼこばかりをつめてるかのようなかんじで、そういうものってカセットで聴くととてもいいんじゃないかと思ってます。
ぼくは人前でフリースタイルラップなんかとてもできやしないししたくないし、ライブでスキャットでもなく即興で言葉のあるうたを歌うなんてこともほぼしない。歌を作るときは大抵後付けでゆっくり熟考しながらメロディの持つリズムに意味のある言葉をあてはめていかないとだめなタイプ。でも仮歌を家で録音する時に、通して即席でテキトーに歌っちゃったテイクでもまあいいかと思えればそのままOKにすることもある。今回の「original works」で言えば、2曲目と7曲目と8曲目と11曲目がそれ(全部だ)。うたものアルバムの「ピップパップギー」の中だと、「珈琲」と「ばかみたいだ」と「ギャー子は世界で一番」がそれ。
そういう歌は文字通りの"口からでまかせ"であるから、胸はって世に問いたいようなものでもない。
インストの曲も、ブツっと突然はじまってる曲を平気で入れたり。体裁良く整えられて、、いない。
それらの曲が、CDやiTunesからでなく、カセットテープやターンテーブルで回転しながら再生されることを想定して構成すると、なぜだかきっとイイカンジになるだろうと思えるような必然を感じつつ納得して完成させられたのが「original works」。
「original works」は海外で広まることをイメージして編んだので、曲名をドイツ語やフランス語や英語にしていて、自分でも発音のしかたに途方がくれる曲が多い(笑)
今まではカタカナ表記が正式でしたが、海外向けなのでこのアルバムはアルファベットでsuppa micro pamchpp を正式クレジットとしてます。ちょっとイメージ変わるでしょ? 字に丸みが多くて視覚的に可愛くないですか? 可愛いんです。気付いて下さい!
そして、ラジカセを持ってなかったとしても、ぜひともラジカセと共に「original works」を手間かけてゲットして下さい。これは音楽との関わり方の提案でもあります。
 
試聴 https://birdfriend.bandcamp.com/album/original-works